奉行

鍋奉行成る者がいる。ひとつの鍋にどのようにどの順序で食材を投入するかを
仕切る者のことである。ある時は頼りがいのある人、またある時は面倒な人という
はっきりとした区分で判断される立ち位置が微妙な者である。
鍋奉行の考えることはただひとつ。おいしく食べさせてあげたい。これしか考えられない。
稀になんでも仕切りたがる人間はいるものだが鍋を仕切るということはそれなりの鍋知識に
長けているからであってそれを発揮したいという純粋な気持ちからそうさせるのであろう。
また鍋だけに限らない。焼肉奉行成る者もいる。僕の周囲にも居る。
その奉行は3児の母しては比較的若く、見た目では独身であると思われるような人物である。
決して仕切りたがりではない。人前では一歩引くような人物である。
その奉行は食材がテーブルに運ばれた途端、炭火で炙られた網へ一掴みで肉を投入する。
そしてまるでフライパンで炒められるような野菜のように網の上で踊らされる肉たち。
もっとゆっくり食べたいと思っている周囲の意見など述べる暇はない。
焼かれていく肉の処理で周囲はそれどころではないのだ。
彼女がその場に居るとまるで大家族の一員になったかのように焼肉という談話テーブルなど
否定するかのような戦場が待っているのである。

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